海外産業博物館  NO.21


科学博物館 Science Museum

地下に工場並みの工作室

−館員の手作り精神生きる−


石田正治  by ISHIDA Shoji


手作り精神が生きる地下の工作室・資料のクリーニング作業

 1990年夏、わが国にも欧米先進国にあるような産業と技術の博物館をつくりたいと、欧州の博物館調査団の一員となった。これまでは一見学者として見て来てたのであるが、この時の旅の目的は、表面からは伺うことのできない博物館の活動を見ることが中心であった。博物館資料の収集と保存の問題、収蔵庫の状況、資料の復元とその技術、研究活動、教育活動など、産業技術系の博物館ならではの問題点を探るためであった。
 科学博物館で強く印象に残るのは、博物館の地下にある工作室。驚かされたのはその設備とスタッフの充実ぶりである。材料切断室、木工加工室、るつぼ炉や火炉のある鋳鍛造室、溶接室、旋盤やフライス盤、ボール盤などの工作機械が数十台並ぶ機械加工室などの部屋がある。工業高校機械科の実習設備をひとまわり大きくした内容で、ちょっとした機械工場と変わらない規模である。しかしながら1919年製のフライス盤が現役で使われているのは博物館らしい。
博物館では展示資料の修復作業や模型製作、あるいは展示パネルの製作などすべての作業をこの工作室で行う。外部の業者に仕事を任せることはほとんどないとの館員の回答であった。動くものはいつかは壊れる。教材として子供たちが手に触れるものは常に手入れが必要である。業者任せにしないこの考え方をわが国の博物館には学んでほしいと思う。
 プラント模型の刷毛による丹念なクリーニング、キャッシュカード機の内部を見せるディスプレーの製作、自動車模型の修復などの作業を見て、科学博物館がこうした裏方の努力によって支えられていることを知った。現在では、このような資料の復元修理作業を公開している博物館もある。
(中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・石田正治)


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